日付が変わったころ、または、もう変わってしまうのかという後悔があったころ、眠れないから、もやもや頭から離れないから、お腹が空いたからなどと、なにかしらの衝動で、何度も寝てしまおうと試みた証の布団からとび起きて、裸足で玄関、脱ぎっぱなしのつっかけひっかけて、アパートを飛び出し外に出ることは、時間を持て余しているころにはあったことだ。
日中よりは過ごしやすい、しかしパジャマのまま、上着なしでは少し肌寒い時期。アパート周り、もしくは、そこから2つ先のコンビニ辺りまで歩く。ポケットに入れた片方のスマホの重みで、不格好なまま、飛び出したからイヤホンもなく、ただすたすたと歩く。住宅街の電気は消えていて、スーパーもラーメン屋も寝静まっていて、信号は点滅すらしていない。虫もないてないんやな。大型トラックが時たま横をデカい音で走り去っていく。自販機の弱々しいあかりと蛾。風と排気ガスはトラックが通ったあとにもしばし残る。こんなに歩いたのに、まだ足先は冷たかったり、飛び出したけれども特に理由はなく、ばかばかしくなって家路につく。用水路を流れる水の音は心地が良い。
なにげなしに手にとって、買った本。カシワイさんという人の本。漫画家でイラストレーターさんだった。たまにsnsで見かけたことがあるくらい。
1ページのなかに文は少なく、その行間のなかに、今や昔、夢や現実などと様々な時間軸のイラストが繋がって描かれていて、題名のように、夜中に頭の中を錯綜するあらゆる場面が確かにあったことを思い出すような本だった。イラストで描かれる一つひとつの「物」や「事がら」は小さなささいなことだけれども、それを一つひとつ大切に思って、扱っているように感じた。それには儚さもあり、寂しさもあるけれども、あたたかい気持ちになれた。
全体を通して、登場した主人公の自分自身に対して、「纏ってきた」ような、「包んできた」ような描写がとてもとてもきれいだった。
心が動いたその時間がスローモーションで流れているように感じた。そこでは、風が一方向から吹いていたり、あらゆる方向から吹いてきたり、水の粒子が舞ったり、魚が泳いでいたりした。主人公の現実の話だと思っていたら、引き込まれていった先には、あら虚構だったのかとよく分からなくなるような、不思議な本だった。色々な青を使っていて、しっとり静かで、夜に開くのにすてきな本だった。買わないタイプの本だったけれども、買ってよかったと思った。
空欄のような、潜る時間が多い一年だった。少しずつ剥がれて、色をつけていくような、新しい発見もしていけるような年にしていきたい。元気でいたいな。
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