身体を労わろうと思えば、季節の野菜を食べることがいいということを身にもって感じた今朝。(昨日も昨日とて、完全にごちそうになっている。)寒さが得意な冬の野菜は、ストレスなく育ち、口に入れたら身体にもすっと馴染んで浸透していった感じがした。そして、ちゃんと時間が経てば、ちゃんと消化されている実感があって、朝起きたときに身体がちゃんと“すっきり”していた。眠りも目覚めもとてもよかったのだった。
そんなことを思いながら、過ごしていた。
『アイスと雨音』という映画がある。監督は松居大悟さんで、主題歌はMOROHAだ。4年前、社会人になる直前のわたしは、予告編を観た時から、これを観るのを楽しみにしていて、職場の新人研修とかを経て、やっと念願叶って観に行ったことを思い出す。大きな映画館ではしてないから、じゃあ一日じゃ無理やなということで一泊して、単館系の映画がたくさん観れる「シネマ尾道」に行った。
駅からでて、目の前に見えるのは海。交差点を渡り、主要な道路ふたつに挟まれた、大きい看板なのにひっそりと日陰にあるその場所を通り過ぎ、尾道ラーメンのお店の真向かい、コインパーキング前の自販機で、なんとなくビンのデカビタ(キャップ付いてるやつ)を買うことがお決まりになっていた。ちびちび飲んだり結局飲まなかったりしながら(ごめんなさい)、映画までの時間、なにもまだついてないスクリーンを目の前にして待つ。ひそひそと話しているお客さんがいるなかで、待っている間、そこでかかっているピアノっぽい音楽(一曲をずっとリピートして流している)を、ひそひそ声も含めて聞くことが、映画館史上、待つ時間の中で特にすきなのだが、その中で、自分の毛布を取ってきて、スマホの電源を切って、カバンの中を整理して、今後の上映作品のチラシを見て、というこれまたお決まりの一連の流れを行い、静かな時間を過ごす。外ではたくさんの走る車や観光客、それぞれの日常生活。それらをまとめて傍において、ひんやりとしたその道、その場所に入った瞬間から、静かに守られているそのひとときをわたしはいつも、とてもいとしく思うのだ。一連の流れを含めて、あの場所にある映画館、「シネマ尾道」がすきだ。
ふと思い出すのが『アイスと雨音』だ。観た感想を星でつけると、⭐︎3/5くらい(わたし好みではないだけだよ、ものづくりして皆に届ける人はすごいです。)なのである。この映画を伝えるときに特徴的なところとして、撮り方が“一発撮り”(有名なのが、ヒッチコック『ロープ』←これは好みな展開)なところと、募集期間を約100時間にして、その期間にネットを通して広くキャストオーディションをしたところだと思っている。Twitterでキャストと同時に、映画のキャッチコピーも考えて、目にした人誰もが応募できたのだ。選ばれるのはその映画に選ばれた数少ない人たちだけれども、そこにチャレンジできる時間が、どの場所にいてもそれを見さえすれば平等に与えられている事実があることがまず心強いなと改めて今、思っている。そしてその経験が合否の結果に限らず、誰かにとっての宝もので、いろんな感情に気がつくきっかけになっているかもしれないと思った。
当時100時間過ぎていたので、普通に眺めていたのだけれども、キャッチコピーは考えて送った記憶がある。そんなことやりたいと考えたことがなかった中で、なんでしたんだろうと考えてみると、就職前、まだまだなにも諦められなくて、途方もなく遠い夢をみたかったんだろうなぁと思う。その当時、いろんなところに行って、一人で感じて、もがいたけれども、結局わたしはみんなと一緒で、同じようにしかみえてなくて、どうにもならないのだなぁ、なにも分かってもらえないのだなぁというやるせなさ、ここまで来たらいよいよ腹を括るしかない感(ぜんぶ青くさいけど、ほんまずっと苦しんでて、その延長線上にいて、自分の居場所や表現の仕方が、なんとなく大きい一歩ではなくても、発想としてあったり、小さくやれたりする今は、本当よかったなぁ、ありがたいなぁと思ってる)があったのだと思い出す。
予告編。この4年間、ふとしたタイミングで何度も観てきていた。MOROHAがこちらを見ながら、訴えかけてくるその態度。観るタイミングで感情が結構ばらばらだったりした。でもやっぱり、なにもかも諦められないという気持ちの割合が多い気がしてきている。歌詞無しの音楽に呑み込まれそうで聴けない時期には、なにもかもがなんでもよくなるのだけれども、それでもなにかにフツフツと、駆り立てられているような気がする。そんなことを思い出す映画だ。
そんなこと抜きにしても、一発撮りの中で、場面を変えるようにして歩いたり、走ったり移動しながら、時間の流れや空気感が変わっている撮り方は、すごくおもしろいので、キャストのパワーとともに観てみてほしい。
主題歌の「望郷タワー」のMV、これは予告編よりもたぶんたくさんこの4年間で観ていると思う。演劇が出来ず、ライブや美術館や旅など“感じにいく時間や幅”が以前よりも減ってしまっている中で(このご時世だけではなく、そのパワーがわたしにないからというのもあるよね。)、少しずつでも表したいものを積み重ね続けていきたいと思える、お守りのような映像だ。MVに出てくる田中怜子さんが、終盤、公にお披露目になる時があるのだが、その時の目が素敵で、何度も泣いた。夢中になっている時、いいこともわるいことも全て忘れて、それだけに集中している時がある。そういう時を、わたしがどんな境遇にいても守り続けていたいと思う。
それはそうと、1/28(金)公開の『フレンチ・ディスパッチ』が直近でわくわくしている映画です。
0コメント