にぎわう街から一本中へ入り、家路に向かう。街頭のない舗装された山道。車を走らせる。同じ道でも日中とは違う静けさだ。暗闇の中を見続けて走っていると吸い込まれていきそう。車のヘッドライトに意識を集中させる。少し肌寒くなってはきていたが、窓を開ける。淀みのない、新鮮な空気。ここは少し降ったのだろうか。木の湿ったにおいがする。
山道のてっぺんまでたどり着けば、左手に一瞬、細かくわたしの住む街が見える。家だけではない、スーパーやガソリンスタンドの色だろうか。別々の色できらきらと光っている。そこから降る。再び街頭がない、向こうの信号までの左に曲がった一本道。信号待ちをしている車が見えた。一面に田んぼが広がっている。戻ってきたことに安堵しつつ、また今日から1週間が始まってしまうんだとも思う。
今日も月が出ている。昨日や一昨日のように星が見えるくらいに空は澄んではいないが、月が出ている。車ではクラプトンがかかっている。同じように前にもこのようなことがあった。
梅雨の入りごろだろう。同じような時期に、同じように車の窓を開け、深く息を吸ったり、吐いたりをしながら、車を走らせていた。助手席から窓を開け、空気を目一杯吸ったり、外を眺めたりもした。
今日も今日とて、あの頃よりもわたしとして、生身で戦っている跡がついているのだが、うれしかった記憶を選んでたどりながら、人のあたたかさを思い返しながら、休日を終える。
きっと、少しずつ勉強したりして、精神的にたくましく階段を登っていけたら、このどんより漂う空気を切り拓いて、また再会できるのだろうと信じている。
いつも、本当にいつも、その来たる日を想像しながら、願いながら、電気を消して眠りについている。
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